ストレージのメモ(SST-MRAMの構造の複雑さ)

Wikipediaより
基礎知識(IT系)

今回も『福田昭のストレージ通信』の記事より。

現在までに発行されている128回のうち、今日までに約1/3を消化した。当初、こんなに時間がかかるとは思っていなかったが、原子構造や電磁気学などの基礎知識が欠けていたのだから仕方ない。でもこの寄り道の甲斐あって、最近購入した半導体製造プロセスの入門書がサクサク読めるのだから、成長はしているようだ。

レビュー(全2件)の総合は★★と低いが、用語の定義がきちんと書いてあって、とても分かりやすい。年末年始で、通読するぞ!と決めている。

SST-MRAMの磁気トンネル接合の複雑さ

磁気トンネル接合(MTJ)素子を、3層構造(固定層/トンネル層/自由層)とするのは説明のための簡易な設定であって、実際のスピン注入型MRAMのMTJは、例えば47層もの超多層膜で構成される(うち、44層が固定層と関連する磁性層)。しかも各層の厚みは極めて薄く、原子層レベルで厚みを制御しなければならない。

参考)磁気トンネル接合の成膜技術の進展 恒川 考二(Journal of the Vacuum Society of Japan = 真空 57(3), 91-95, 2014-03 日本真空協会)

理由

固定層が2つの役割を担う必要があること
役割1:磁化の固定
役割2:電子スピンの偏極

電子スピンの偏極とは、電子スピンの向きを「上向き」あるいは「下向き」にそろえる(偏らせる)ことをいう。「上向き」とは、上向きの磁気モーメントを発生するスピンを意味し、このような働きをする素子を「スピン偏極子(spin polarizer)」と呼ぶ。

磁化の固定と電子スピンの偏極の両立は難しい

  • スピン注入による磁化反転を起こす電流の密度を低くするためには、電子スピンが偏極していることが望ましく、スピン偏極子の効果を高めるには、スピン偏極を起こす層はなるべく厚くしたい。
  • 磁化を固定する層は、なるべく薄くしたい。

ーー> 単層で実現することが困難なので、多層の膜構成にする必要がある。

高分解な成膜の具体例(47層構成の場合)

①タンタル(Ta)層
・厚みは10nmで最厚
・役目は下地基板とのバッファ
②コバルト鉄ホウ素(CoFeB)の合金層
・厚みは0.8nmほど
・自由層の主要層
③酸化マグネシウム(MgO)層
・厚みは2nm~3nmくらい
・トンネル障壁層

※残りの44層は全て、固定層と関連する磁性層

④固定層(全14層)
鉄(Fe)層(0.5nm)、
CoFeB層(0.8nm)、
Ta層(0.3nm)
Co層とパラジウム(Pd)層を対とする5対の多層膜
ここで、Co層の厚みは0.25nmで、MTJを構成する薄膜層としては最も薄い。
Pd層の厚みは0.8nmである。
その上に、厚さ0.3nmのCo層が載る。

⑤中間層(スペーサ層)として厚さ0.9nmのルテニウム(Ru)層が入る。

⑥Co層/Pd層のペアを14回重ねた多層膜が載る。
Co層の厚みは0.25nm、Pd層の厚みは0.8nmである。

⑦キャップ層として厚さ7nmのTa層が載る。

結晶の配向性の復習

磁性体中の磁気モーメントは本質的に動きやすいので、このためMTJ素子の設計では、磁気モーメントをしっかりと固定する多層膜の構成にかなりの努力が費やされる。

福田昭のストレージ通信によると、結晶構造が異なる(体心立法、面心立法)金属を重ねて成膜することが問題となるので、スペーサとしてTa層(0.3nm)が必要らしい。

ところで、結晶構造とはなんだったか?

『物質化学の基礎』より

 

磁性と結晶構造の関係に関する解説を求めてWeb上を探すと、よいものが見つかった。

電子軌道による角運動量L は、結晶構造の対称性(格子位置にある原子による電界分布の対称性)によってその安定な方向が影響を受けるので、磁気モーメントも結晶格子軸に沿って容易方向、困難方向が決まる、ということです。遷移金属の強磁性体では結晶構造(立方晶)の対称性によって、L がほぼゼロになる、と以前に書きましたが(2-1)、結晶磁気異方性は、僅かに残っている L が対称性の影響を受けて、これに結合している(LS coupling といいます)スピン磁気モーメントも、結晶軸に沿った容易軸、困難軸を持つ、これが結晶磁気異方性です。

出典:磁性材料・磁気工学入門 http://www.toei-tc.co.jp/yshimada/index.html

 

少しずつ知識が繋がってきたが、まだまだ整理されていない。もうちょっと頑張ろう。