ストレージのメモ(MRAM、SST-MRAMまとめ)

Wikipediaより
半導体・ストレージ・NAS

概要

  • 磁気トンネル接合(Magnetic tunnel junction、MTJ)を構成要素とする不揮発性メモリである。
  • MTJの磁化反転方式の違いによりMRAM、Toggle MRAM、STT-MRAM(Spin Transfer Torque MRAM)、SOT-MRAM(Spin Orbit Torque MRAM)などの種類がある。
  • 外部からの強磁場に弱い。これはMTJ素子が可動層の磁化そのものではなく、両層の磁化方向の違いによりデータを記録する為に固定層の磁化が狂ってしまうと正常に読み出しできずに回復不能(ハードエラー)になるからである。

SRAMやDRAMなどの電荷を情報記憶に用いるメモリと異なり、MRAMはMTJの磁化の状態(平行/反平行)によって情報記憶を行うため電源を切ってもデータが保たれる。

不揮発性の意味
不揮発性とは、熱エネルギーが、磁化方向がスイッチするエネルギー量を上回らないこと。

利用する原理/性質

交換相互作用

定義(岩波理化学辞典第3版)

異なる一電子軌道関数を占める電子のスピン間や原子(イオン)のスピン間に働く見かけ上の相互作用。

概要

  1. 強磁性体では隣接する原子磁気モーメントが同じ方向にそろう性質を指す。
  2. 磁気モーメントが同じ方向にそろった原子の集まりを、「磁区」と呼ぶ。
  3. 磁区全体における「磁化(magnetization)」の方向と大きさは、単位体積当たりの磁気モーメントの大きさと、磁区の体積Vの積(掛け算)で表現される。

磁気異方性

定義(岩波理化学辞典第3版)

磁性体結晶において、結晶軸に対する磁化の方向によって熱力学的量が変化する現象。特に、強磁性体結晶の内部で、自発磁化の方向によって内部エネルギーが変化する現象。

概要

  1. 強磁性体には磁化が容易な方向(「磁化容易方向」)と磁化が困難な方向(「磁化困難方向))が存在する性質。
  2. 磁化の方向を垂直で上向きを0度と定義すると、0度と180度が磁化容易方向の場合、90度と270度が磁化困難方向となる。

強磁性体

概要

外部から磁界を加えると磁界と同じ方向の磁気を強く帯びるとともに、外部からの磁界をゼロにしても強い磁気が残る性質があり、磁気メモリや磁気ディスクなどの磁気記憶媒体の実現に欠かせない。

素材

工業的には利用できる素材は、Fe、Co、Niのわずか3種類

電子の状態

上向きの電子の数と、下向きの電子の数(状態密度)に偏りがある。例えば上向きの電子が多ければ、強磁性体は上向きの磁気モーメントを備えるように磁化されている。下向きの電子が多ければ、磁化は逆向き(下向き)になる。

常磁性体

概要

外部磁界が存在しない状態での原子の磁気モーメント(電子スピンによる磁気モーメント)が存在しており、磁気モーメントの方向がばらばらであるために全体としては磁気を帯びていない。

素材

室温で常磁性を示す材料は、アルミニウム(Al)やクロム(Cr)、モリブデン(Mo)、ナトリウム(Na)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)など、数多い。

電子の状態

外部磁界を加えると磁気モーメントが回転して一定の方向にそろうので、磁界と同じ方向の弱い磁気を帯びる。

反磁性体

概要

外部から強い磁界を加えると、非常に弱い反対方向の磁気を帯びる材料であり、外部磁界をゼロにすると、磁気はゼロとなる。

素材

室温で反磁性を示す代表的な材料は、水、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、アルミニウム酸化物、塩化ナトリウム(NaCl)などである。

課題

磁気記憶の高密度化と低電力化は相反するので、このバランスを取ることが重要。

  • 磁気記憶(あるいは磁気記録)の密度(面密度)を高めるということ=磁性体粒子の体積Vを小さくすること。

体積Vを小さくしながら、磁気異方性エネルギー⊿E(=KV)を同じ大きさに維持するには、磁気異方性定数Kを大きくする必要がある。(⊿Eは熱エネルギーよりも、はるかに大きな値を維持しなければならない)

  • データ書き換えの消費電力をなるべく低くするということ=磁気異方性定数Kをなるべく小さくすること。

磁気異方性定数Kが大きくなるほど、書き換えに必要な磁界が大きくなり、したがって消費エネルギーが大きくなる

磁界型MRAM(第一世代のMRAM)について

特徴

  • 製造が比較的容易なこと。不揮発性でありながら、無限に近い回数のデータ書き換えを保証する初めての半導体メモリとなった。
  • 微細化に適さないこと。磁界発生のために専用配線を必要であったり、磁化の方向がシリコン表面と平行な方向であることなどから、メモリセル面積が非常に大きくなった。
  • 大容量化に適さないこと。データ書き込みに必要な電流が高いことが、大容量化妨げとなった。

ー>スピン偏極した電流を注入することにより磁化反転を実現するSST-MRAMの開発

構造

MRAMはMTJ、セルを選択するためのビット線、ワード線、そしてMTJの抵抗変化を読み出すトランジスタからなる。ビット線、ワード線はMTJを挟んで直交に走っており、両者に同時に電流を流すことで合成磁場を誘起し、メモリセルを選択することができる。

wikipediaより

動作原理

書き込み

MTJの磁化反転により行われる。MTJは絶縁体層を上下の強磁性体層(フリー層:磁場により向きが変わる,ピン層:磁場によらず向きが固定)が挟み込む構造からなり、上下の磁化の向きが相対的に”平行”か”反平行”であるかによって抵抗の大きさが異なるトンネル磁気抵抗効果(Tunnel Magneto Resistance effect、TMR)を示す。つまり、ビット線とワード線の両方に電流を流すと、合成磁場が誘起され、それによりフリー層の磁化が反転することを利用する。

読み出し

読み出し時には、TMR効果によってMTJの抵抗の大きさが平行、反平行時(LとR)で変化するので、これらに対応する抵抗値をデータの0と1としている。

SST-MRAMについて

特徴

  • 金属配線の製造工程と互換性があること
  • 不揮発性であること(待機時の消費電流をゼロにできる)
  • 高密度化と微細化を進められること
  • 読み出しと書き込みに要する時間が短いこと
  • 原理的には書き換え回数の制限がないこと

利用範囲

  • ラストレベルキャッシュや主記憶に使う。
    ー>ラストレベルキャッシュと主記憶がが不揮発性になることで、待機時消費電力が低下するとともに、システムの使い勝手が向上する。
  • 当初は、「ユニバーサルメモリ」(1種類のメモリで全てのメモリ(プログラムメモリとデータメモリ、さらには外部記憶)を賄う汎用のメモリ)の最有力候補であったが、その製造コストが下がらないため、メモリの主流派にはなれないらしい。今後の展望としては、ロジックへの埋め込みメモリとして活躍するのかもしれない。

参考:STT-MRAMの「夢」を捨てたMicronとSamsungが見据える未来

 動作原理

強磁性体と電子スピンの交換相互作用を利用する。

仮定

上方向(垂直方向)に磁化された強磁性体に、磁気モーメントの向きがそろった電子を注入する(電流を流す)状況を考える。

ここで、磁気モーメントは上向きだが、斜めに傾いている。つまり電子スピンによる磁気モーメントには垂直方向の成分と横方向の成分がある。

電子が強磁性体に突入すると、電子のスピンによる磁気モーメントと、強磁性体の磁化(磁気モーメント)の間で交換相互作用が起こり、電子のスピンによる磁気モーメントが垂直方向にそろえられる。強磁性体を通過して出てくる電子はすべて、上方向(垂直方向)の磁気モーメントを備えるようになる。交換相互作用の起こる距離は非常に短い。1nm程度である。

生じる現象

交換相互作用によって電子の磁気モーメントは横方向の成分を失う(回転して垂直方向に向きを変える)とともに、強磁性体の磁気モーメントに回転トルクを与える。

強磁性体に与えるトルクは、電子の磁気モーメントが回転することの反作用であり、トルクの方向は電子の磁気モーメントの回転とは反対の方向になる。例えば電子の磁気モーメントが左回りに回転したときは、磁性体の磁気モーメントは右回りのトルクを受ける。

1個の電子によるトルクは非常に小さいが、数多くの電子によるトルクが集まれば、いずれは強磁性体の磁化を反転させるほどの大きさのトルクになる。

強磁性体で磁化反転を起こすには、スピンの向きがそろった電子を数多く注入し、交換相互作用によって反作用トルクを発生させる。反作用トルクが一定以上の大きさになると、強磁性体で磁化反転が起こる

その他、エネルギーバンド図やエレクトロマイグレーションなど、書けそうなことはあるけれど、今回は省略する。