進捗(3/4~3/10)日本語の勉強を継続中

日本語・英語・翻訳技術

先週に引き続いて『日本語の作文技術』を読み進め、とりあえず読了した。本書の後半部分にある助詞についての解説は、以前に読んだ『日本語練習帳』(大野 晋)に記載のものと共通するところが多い気がするので、『日本語後練習帳』についてまとめたメモと読み比べると更に理解が深まるかもしれない。

助詞について

『日本語の作文技術』によれば、

  • 日本語のように、主題はあっても主語がない言語は珍しくない。
    『何々が何々を持つ』という言い方をしないで『何々に何々がある』という
    『誰々が何々をした』という言い方をしないで『どこどこで何々があった』という
    例)
    明日は曇り、のち晴れでしょう。
    熱いコーヒーが飲みたい。
  • 日本語に「主語」は存在せず、あるのは「主格」に過ぎないと考えることもできる。そのため、日本語を正確に使いこなせるかどうかは、助詞を使いこなせるかどうかにかかっている。

係助詞「ハ」

係助詞「ハ」は、格助詞ガノニヲを兼務するとみて、文の題目を示すものと規定する。
つまり、甲・乙・丙を題目として提示すると、ガもヲもハが兼務する。連体格「ノ」を兼務する例が「象ハ鼻ガ長イ」であって、これは「象ノ鼻ガ長イコト」という無題文から「象」を題目として取り出したため、ハはノを兼務しているとみなす。

(例)
提示: 甲ガ 乙二 丙ヲ 紹介シタコト

甲ハ     乙二 丙ヲ 紹介シタ。
乙ニハ 甲ガ    丙ヲ 紹介シタ。
丙ハ  甲ガ 乙二    紹介シタ。

翻訳の直訳調が分かりにくい理由と、こうした考え方との関係

(例)
  男たちは突然現れた裸の少年を見て、大変驚いた。

最も簡単な深層構造を表面に出して無題化(題目なしの形)にすると、

  突然現れた裸の少年を男たちが見てたいへん男たちが驚いたこと。

原文の大黒柱としての「驚いた」という述語は、次の三つの言葉を受けている。

二つの主格「ガ」を「ハ」で兼務すると考えると

 A)突然現れた裸の少年を男たちは見てたいへん驚いた。
 B)突然現れた裸の少年を見て男たちはたいへん驚いた。
 C)男たちは、突然現れた裸の少年を見てたいへん驚いた。

題目「男たちは」は、述語「驚いた」にかかる。そこで、題目と述語の距離が近いBの方がよい。「男たちは」を強調したいのであれば、Cになる。また、Bの「男たちは」の「ハ」は、その前の「見て」に深層でかかっている「男たちが」を兼務することになる。
--> 「ハ」は語順上あとにくる格を兼務するだけでなく、前のものも兼務できる。これに似た用法を英語でいえば分詞構文になる。
 Seeng a lion come out, he ran off.
(ライオンが出てくるのを見て、彼は走り去った)

練習

ネットから拾ってきた日本弁理士会の機関紙パテントの記事『明細書翻訳における数と冠詞の概念とその実務』(倉増 一, 2015, vol.68 No.4)の例文で、上記の「男たちは・・・」のような構造式タイプの分析を試した。

(文例1)

For example, shrimp eggs are fertilized and placed into rearing tanks, and the resulting zygotes are allowed to develop in the tanks until the 2 day old Post Larvae stage.

(分析)

これをそのまま、パーツごとに訳してみると

以上をまとめた自作の訳文は以下のようになった。

自作:例えば、小エビの卵を受精後に飼育槽に入れ、2日齢の後期幼生期(old Post Larvae stage)まで前記タンク内で受精卵を成長させる。

なお、本記事に掲載されていた訳は次のようなものである。

訳例1A:例えば,小エビの卵を受精後養殖タンクに入れ,受精卵を2 日の後期幼生段階(Post Larvae stage)までそのタンク中で成長させる。

訳例1B:例えば,小エビの卵を受精後に養殖タンクに入れ,それらの受精卵を2 日の後期幼生段階(Post Larvae stage)までタンク内で成長させる。

(反省)

“stage”を「期」と訳したのは失敗だった。それでは”period”になってしまう。