フッ化水素酸についてメモ

ほかの技術知識

ハロゲン化水素(フッ化水素)の記事の補足。


先日、wikipediaでフッ化水素について調べたところ、酸性について下記のようにあった。

Wikipediaより
Wikipediaより

酸解離定数Kaについて

『物質化学の基礎』(三共出版)より

 希薄溶液中とそれ以外で酸性度が変わるとは、どういうことだろうか?たしか酸性の強度は、濃度ではなく酸解離定数Kaで決まるはずだ。また「フッ化水素の水溶液は水素結合を介して会合している(=会合体末端のHしか電離できない) から弱酸性 」なのであれば、濃度によって酸性度が変わるのは何なのか?

 化学は大学の共通科目(文理・専攻に関係なく、1・2年生が全員履修する選択科目の一群)でさわりを習っただけで自信がない。当時の教科書を確認したところ、酸解離定数の表(左)が見つかった。真ん中あたりにあるフッ化水素酸のpKaは3.14であり、弱酸に分類される酢酸(4.757 )よりも小さい。

pHとpKaの復習

強酸の場合(c mol/Lの1価とする)

強酸の場合

弱酸の場合 (c mol/Lの1価とする)

 弱酸では、酸の濃度と水素イオン濃度が異なることに注意して考える。

  • c mol/Lの1価の弱酸の電離度をαとすると、水素イオン濃度はcαmol/Lなのでしたがって,水素イオン濃度は-logcαになる。
  • 電離定数を酸の濃度と電離度を使って表すことができ、1-α≒1に近似するとKa=cα^2となる。
弱酸の場合

あらためてフッ化水素酸について

 ネット検索をしていたところ『フッ化水素酸の弱酸性説明の妥当性は』(金児 求,化学と教育66巻7号,2018)という、まさにぴったりのものが見つかった。冒頭に挙げたWikipediaをもっと丁寧に説明したような内容を含んでいる。

純粋なHF と希薄なフッ化水素酸の酸性の違いについて,次のような記述 17)がある;「会合状態のHF から孤立した(原文:isolated)H2O 分子へHが移動することは,孤立したHF分子から会合状態のH2O へHが移動することと大きく異なる」。純粋なHF の酸性は,会合体がHを失ってできるF(HF)n’ が比較的安定であることに基因するとされる。またこの記述から,希薄なフッ化水素酸中では,HF 分子一つひとつは圧倒的多数の水分子によって水和されていると考えるのが妥当であるとわかる。ちなみに計算化学的手法により希薄なフッ化水素酸の性質を考察する場合は,例外なく水和した一分子のフッ化水素を計算のモデルとして置く。
 一般的には,希薄なフッ化水素酸中の化学種の分布は次の二つの可逆反応で記述される。
  HF ⇄ H+F  …① Ka=6.84×10-4
  F+HF ⇄ HF2 …② K1=5.13
(Ka,K1の値は文献15 のもの。K 1 の値は文献により様々で概ね4~6)フッ化水素酸の濃度が大きくなると酸性が 急激に強くなるのは,安定な二フッ化水素イオンHF2を 生成する②式,あるいはさらに後述の③式の寄与によるとされる 15)。(中略) 

HF2+HF ⇄ H2F3 …③ K2=0.50
フッ化水素酸の濃度が0.1mol/L,濃くても0.3mol/L 程度までなら存在する化学種の分布は①と②で十分表せるが,濃い水溶液ではずれが大きくなる。③まで考慮すれば,かなりの濃度(~6mol/kg)まで,信頼に足る計算ができるとされている 15, 20)。

『フッ化水素酸の弱酸性 説明の妥当性は』より

つまり、濃度が上がると、②や③の反応が右に進むからそれに引っ張られて①の反応が右に進む、という理解でいいだろうか。