強誘電体メモリ③(ヒステリシスループ)

『福田昭のストレージ通信』より。「強誘電体メモリの再発見シリーズ」の勉強メモ( 強誘電体を含めた誘電体全体における、外部電界の強さと分極の大きさの関係について )の一部。

ヒステリシス(hysteresis)
ある量Aの変化にともなって他の量Bが変化する場合に、Aを変化させる経路によって同じAに対するBの値が異なる現象。Aを増大させてから減少させるとき、A-B曲線が閉曲線を描く場合には、その輪をヒステリシスループという。

岩成理化学辞典 第3版増補版

外部電界と分極の関係

※外部電界が静電界あるいは非常にゆっくりと変化する電界である場合を想定

分極と外部電界の関係式を思い出すと、以下のようであった。

誘電体の種類と、分極(P)-外部電界(E)の関係を示すグラフ。左から誘電体、常誘電体、強誘電体、反強誘電体。出典:NaMLabおよびドレスデン工科大学

 真空中の誘電率は不変なので、分極の大きさは、(比誘電率 -1)と外部電界に比例する。ただし、強誘電体の比誘電率kは「必ずしも一定ではない」。一部の誘電体は、外部電界(E)がかなり強くなると比誘電率(k)が低下する。このため、ブラフは折れ線あるいは曲線となり、分極(P)は飽和状態を示す。また、外部電界(E)がゼロになると分極(P)もゼロに戻る。縦軸に分極(P)、横軸に外部電界(E)を取った右のグラフ (「福田昭のストレージ通信」より) によると、強誘電体と反強誘電体の変化はヒステリシスループを描くことが分かる。

強誘電体の特徴3つ

  • 比誘電率(k)が外部電界によって大きく変化すること
  • 外部電界(E)がゼロになっても分極(P)が残ること(残留分極)
  • 外部電界(E)の変化の仕方(履歴)によって分極(P)が異なること

反強誘電体のヒステリシスループ

反強誘電体とは

 強誘電体の一種であり、隣接する電気双極子(プラスとマイナスの電荷対)が互いに反対方向を向いている。したがって、外部電界がない場合は全体として電荷が中和され、分極が生じない。

辞典には、もう少し詳しい記載があった。

反強誘電体(antiferroelectrics)
結晶のとなりあった格子点に電気双極子が反平行に並んで双極子モーメントを打消しあい、全体としての自発分極が0になっているもの。この場合の誘電性を反強誘電性という。2種の格子点のそれぞれを副格子あるは部分格子という。温度が上がると、結晶構造の対称性が高く、副格子ごとの自発分極も0の常誘電相に転移する。この転移温度をキュリー温度といい、誘電率の異常さが現れる。反強誘電相ではヒステリシス曲線は観察されないが、反強誘電状態と強誘電状態とのエネルギー差が小さい(前者が低い)場合には、高い交番電場のもとでキュリー温度付近で二重ヒステリシスを描く。反強誘電体の例は、PbZrO3, PbHfO3, (以下略)

岩成理化学辞典 第3版増補版

プラス方向の外部電界をゼロから徐々に加えた場合

  1. 分極が徐々に生じる(比誘電率kは一定)
  2. 外部電界の強さがある水準を超えると、分極が一気に進む(比誘電率kが急増する)
  3. 外部電界をさらに強化すると分極の急上昇は停止して、外部電界がゼロのときと同様に、わずかな上昇になる(引き続き、外部電界を下げていく)
  4. 先ほど分極が急上昇した値まで電界強度が下がっても、分極の急低下は起こらない。
  5. 外部電界をさらに下げると、分極が急低下する
  6. 外部電界をゼロまで下げると、分極もゼロになる。