膜形成から考える微細化

半導体・ストレージ・NAS

電子情報通信学会「知識の森」で勉強したときのメモ。 ゲートスタックに着目した微細化(参考:MOSFETを勉強する前の基礎知識)とはまた別の視点の微細化方法。


ムーアの法則と酸化膜の形成方法

 ムーアの法則 「半導体の集積度は1年で2倍、もしくは3年で4倍に向上する」が破綻しつつある理由の1つは、 シリコンの(100)基板上でしか MOSFETの要となるSiO2ゲート絶縁膜を良好な界面特性で作れないことにある。つまり、(100)以外の面は捨てているのと同然で、シリコンを有効利用できていない。

関連記事:リーク電流と微細化の関係結晶格子面の表し方(ミラー指数)

原因

SiO2ゲート絶縁膜を、分子反応のみを用いた熱酸化法で形成しているから。

-->これを解決するには膜の形成方法を変えればよいのであって、新しい膜形成方法の1つにラジカル酸化がある。

ラジカル酸化

電子情報通信学会「知識の森」10-2-1より

反応機構

■ラジカル酸化

  1. 電子と衝突して中間励起状態に励起されたKrがO2分子と衝突して、極めて効率良く2個の酸素ラジカル(O)を形成する(1・1)
  2. 酸素ラジカルがSi表面と反応して低温で超高品質のSiO2膜を形成する(1・2)

■ラジカル窒化( XeとNH3ガスをプラズマ励起空間に供給する )

  1. 中間励起状態に励起されたXeがNH3分子と衝突してNHラジカルを効率良く形成する
  2. NH*ラジカルがSiと反応して低温で超高品質のSi3N4膜を形成する

なお、ラジカル酸化・窒化いずれの場合も、導入するガス(Kr, O, Xe, NH3)に汚染やダメージを与えない新たなプラズマプロセス装置が必要になる。

ラジカル酸化で得られるもの

  • すべての面方位のシリコン表面に同じ成膜速度で得られる超高品質の SiO2膜 と Si3N4
  • リーク電流の抑制( ラジカルSi3N4膜 で発生するリーク電流は従来の熱酸化膜の約1/1000以下であり、その電流密度は1A/cm^2)
  • 高い信頼性と驚異的な長寿命(Xe/NH3ガスで形成された酸化膜は熱酸化膜の3000倍以上の寿命)
  • 原子オーダで平坦化されたウエハ表面
電子情報通信学会「知識の森」10-2-1より

ラジカル酸化を実現するために

 汚染やダメージを全く与えない新しいプラズマ装置が必須になる。現状のプラズマ装置は大量の汚染やダメージを基板表面に与えるため、トランジスタ製造には全く使用できず、配線形成工程だけで使われている。


 集積回路の微細化と簡単にいっても、各製造プロセスに微細化できる要素があり、そのための技術開発が続けられている。今日書いたのは、シリコン酸化膜の形成法の視点からみた微細化だった。以前調べたゲートスタックの改善と組合わせたら、まだまだ微細化が進みそうだ。現状のプラズマ装置がダメだという話だから、プラズマ装置にも集積回路の微細化に貢献する新技術が当然あって、特許検索をすると何か出てくるのだろう。

ちょっと短いけれど、時間切れにつき今日はここまで。