進捗(9/2~9/8)国際出願(補正)

 校正の研修のなかで「国際出願のルート(パリルート出願 or PCT出願)によって翻訳に対するコメントの付け方が違いますから気を付けてください」という話があった。

  • パリルート出願: 原文不備訂正が可能なので、翻訳/校正時のコメントに「訂正」という単語をを使用できる
  • PCT出願:原文不備訂正が不可なので「訂正」という単語を使わず「~とみなして」を使うか、原文誤りの可能性の指摘しつつ原文通りに訳す

 それぞれの法的背景を踏まえて「パリルート出願」と「PCT出願」の違いについてあらためて調べた。

参考:特許庁ウェブサイトおよび翻訳会社インターブックスのコラム

パリルート出願

 パリルート出願の場合、パリ条約第4条の2に規定されるように各国の特許は独立しているので、外国出願(英文)は、法的には日本国出願から独立した存在になる。

第4条の2 各国の特許の独立
(1) 同盟国の国民が各同盟国において出願した特許は,他の国(同盟国であるか否かを問わない。)において同一の発明について取得した特許から独立したものとする。

(2) (1)の規定は,絶対的な意味に,特に,優先期間中に出願された特許が,無効又は消滅の理由についても,また,通常の存続期間についても,独立のものであるという意味に解釈しなければならない。

(3) (1)の規定は,その効力の発生の際に存するすべての特許について適用する。

(4) (1)の規定は,新たに加入する国がある場合には,その加入の際に加入国又は他の国に存する特許についても,同様に適用する。

(5) 優先権の利益によつて取得された特許については,各同盟国において,優先権の利益なしに特許出願がされ又は特許が与えられた場合に認められる存続期間と同一の存続期間が認められる。

パリ条約

したがって、必ずしも外国出願の内容と日本国出願の内容が一致している必要はない。ただし、内容が一致していれば、日本国出願(基礎出願)をの出願日を基準として特許性の優先権を主張できる。

日本の国内基礎出願の優先権を主張して米国で出願する場合

  1. 日本で国内基礎出願をする(出願1)
  2. 優先権証明書(出願1の翻訳) を用意する。出願1に実施例などが追加されている場合がある
  3. 米国で出願する(出願2)
  4. 米国の審査官は、出願2の内容について、その出願日を基準に特許性を判断し、先行技術が見つかった場合は、その旨を拒絶理由通知する
  5. 指摘された先行技術が出願1よりも後の日付である場合は、出願人は、 優先権証明書(出願1の翻訳) を提出して、この先行技術に対する新規性を主張できる
  6. 米国の審査官は、優先権証明書を見てはじめて、出願1の内容(を翻訳したもの)を知る

 したがって、原文の範囲を超える翻訳があっても、それで直ちに不利に扱われるわけではない。いっぽうで、出願1を翻訳する際に内容が欠落して原文の範囲未満の翻訳になってしまうと、優先権を主張できる範囲が狭くなる場合がある。

PCT出願

 各国の出願手続き(国内移行)は、PCT条約に従属しているので、基礎出願と国内移行出願の内容は、一致しなくてはならない。また、国内移行の際に、米国では翻訳文のみを対象に特許性の有無を審査することができる。国内移行手続き後に補正を加えることもできるが、原則として、翻訳文は基礎出願の内容を(誤記を含めて)忠実にトレースしたものでなくてはならない。

米国では、特許査定後に原文と翻訳文の食い違いが見つかった場合、訴訟において不法行為と認定されたり、特許権が無効になる場合もある。


以下、PCT出願の「補正」のタイミングについて調べたメモの一部

PCT出願の補正のタイミング

PCT出願の流れ

19条補正

国際調査報告の結果を受けて請求の範囲を1回だけ補正することが可能

条約第19条に基づく補正の特徴と留意点

  • 19条補正は、WIPO国際事務局に対して提出する( 出願先は、「自国の特許庁(国籍のある国または居住している国の特許庁)または世界知的所有権機関(WIPO)の国際事務局」だった )
  • 出願時におけるPCT国際出願の開示の範囲を超えることは できない
  • 19条補正によって補正された請求の範囲は、出願時の請求の範囲とともに国際公開される
  • 19条補正は、PCT国際出願の一部として各指定官庁に送達される

34条補正

 国際予備審査を請求した出願人は、書面による見解又は国際予備審査報告の作成の開始前であれば、条約第34条に基づきPCT 国際出願を補正することができる。補正の対象は、明細書・請求の範囲・図面であって、補正の回数に制限はない

条約第34条に基づく補正の特徴と留意点

  • 34条補正は、国際予備審査機関に対して提出する
  • 34条補正の内容を踏まえた国際予備審査を実施してもらうためには、できる限り、国際予備審査の請求時、遅くとも国際予備審査が開始される前までに提出する
  • 規定上は、国際予備報告の作成が開始される前までに提出すればよいが、確実に34条補正を踏まえた国際予備審査を実施してもらうためには、国際予備審査の請求時に1回目の34条補正を提出することが望ましい
  • 34条補正は、国際予備審査報告の附属書類として、WIPO国際事務局を経由して各選択国に送達される

各指定国へ国内移行した後に認められる補正

 PCT国際出願時の開示の範囲を超えることは原則認められないが、最終的には各指定国の国内法令に従って、補正の手続が行われる。日本の場合、特許法第17条の補正がこれに該当し、PCT国際出願が特許庁に係属している限り、補正を行うことができる原則となっている。