進捗(9/9~9/15)基礎からもう一度

 今日はだらだら書こう。そういう気分だから。

 通翻訳のエッセイや講座のビデオに、チョムスキーの生成文法がたまに出てくる。それでときどき、大学受験に失敗して予備校に通っていた頃に習った英語教師で、チョムスキー推し(だったと思う)の表三郎氏の著作『スーパー英文読解法』(過去の記事へのリンク)内の課題を解いてみたりしている。当時と比べると英語力は飛躍的に高まっているはずなのに、模範解答のような滑らかな日本語はなかなか作れない。どこかぎこちないのだ。しかも訳が一回で決まらない。あぁ実力不足。

同時通訳のセミナー

 札幌某所で開催されたセミナー 「同時通訳に必要なスキルとは ~日英の同時通訳を事例に」を聴講してきた。通訳案内士の資格は持っているけれど、スクール経験も実務経験もない身としては、新鮮は話ばかりだったので書いてみる。

 セミナーの講師は現役の社内通訳者で、いわゆる英語の英才教育を受けた人ではなかった。日本人として日本国内で英語を学び、それをそのまま仕事に結びつけているという方だったので、大変参考になった。以下、セミナーの内容を踏まえた話になる。

同時通訳者の頭の中

 同時通訳者の頭の中がどうなっているかという話でよく聞くのが「耳から入ってきたものを『イメージ』で捉えて、それをそのままターゲット言語にするのです」 というリクツだが、バイリンガルでもなければ海外留学の経験も乏しい、一般的な日本の英語教育を受けて育った人には実感しづらい概念だ。そんなふわっとした説明でわかるわけがない。もっと具体的に、何をどうすればいいのかを教えて欲しい。

 『英語の通訳』西山 千

 一般的日本人が同時通訳に取組むための姿勢を示した書籍として、日本の同時通訳の第一人者である西山 千の著作が取り上げられた。セミナーをボイスレコーダーで録音したものから書き起こすと、だいたいこんなことが書いてある。

通訳ができない根本的な理由として、まず、(あなたは)自分の言いたいことだけ話すという経験しかないでしょう?会話をするときに、相手の話す内容をきめ細かく聞いているのではなく、大体の内容がわかる程度にしか相手の言っていることを聞いていないでしょう。幼児の頃からずっと、相手の話は概略的にのみ受け取って、自分の話は自分の言いたいことだから必死に話すという癖が身に深く浸み込んでいるから、別の概念に切り替えるのが容易ではないのです。(中略)話し手の会話を普通の集中力で聞いていたのでは不十分です。それでは通訳になりません。

『 英語の通訳―異文化時代のコミュニケーション  』の内容らしい。

「通訳」を「翻訳」に、「聞く」を「読む」に置き換えれば、この指摘はそのまま、自分の現状に当てはまる。先月から受け始めた校正の某研修でも、スタイルガイドや規定に沿った校正や訳者の訳文を尊重することの大切さについて、頻繁に注意喚起されている。自分は果たして、対象となる文章を「読めて」いるのか。結論を勝手に予測して、自分の思うような話の展開になるように「曲げて」はいないだろうか。

  一般の文章だけでなく、 特許の請求項についても言えることだが、日本語は助詞の置き方ひとつで、ニュアンスが変わってしまう。 また、法律事務所でバイトを始めたことで、ひとつの特許に費やすお金と時間の大きさを知った。請求項の数にもよるけれど、PCTルートで海外出願を1つして、それを米国に国内移行するのに二百万円以上かかる。時間も2年くらいはかかってしまう。大企業はいざ知らず、地方都市の中小企業にとって「アメリカで特許を取る」のは、とても大きなことなのだ。特許翻訳には重みがある。

 なお、セミナーでは現役同時通訳者の最高峰である長井鞠子氏の言葉として「できる限りの準備をして通訳に臨みたいですよ。 」を紹介していた。これも翻訳に通じる。訳に取り掛かる前に、どれだけ対象について調べるかという話だ。

先の集中力と併せて準備の程度が足りないのが「訳が一回できまらず、しかも仕上がりがぎこちない。」の根本原因だろう。

また、テクニックの話題としてはチャンクで訳すの解説があった。


 セミナーの帰り道に古書店で『言語の脳科学―脳はどのようにことばを生みだすか 』(酒井国嘉,中公新書)を買った。学生の頃、言語学分野の一般教養科目は特別好きだった。学部ごとの専攻科目に別れて以降は言語学に触れていないけれど、店頭でパラパラ見た感じでは、なんとか読めそうだ。また、 Amazonの中古で『英語の通訳―異文化時代のコミュニケーション 』(西山千,サイマル出版会)を注文した。

 赤いピース(タバコの銘柄)をふかしながら、表三郎氏はよく言っていた「きみ、けっきょくね、人は自分が成りたいものになるんだよ」

深い。