進捗(9/16~9/22)同時通訳文法

 先週の記事でちょっと書いた同時通訳のセミナー資料をあらためて読んでみたところ、Tradosを使った翻訳(=> チャンクで切って、前から訳す)に役立ちそうな部分が沢山あった。

 翻訳術に関する参考書や、現在進行形で受験中の某翻訳会社の校正者研修(採用二次試験)で貰った特許校正のテキスト、アルバイト先の法律事務所で弁理士先生から受ける実務的なレクチャーなどを合わせて考えると、だいぶんネタが揃ってきた気がする。

 以下、同時通訳論のセミナー資料『吹田市民大学講座 関西大学講座 講演録(第一部)』の内容の一部を改変してまとめたものである。目標の和訳術を「前から訳し、かつ、訳文を1回で決める」と定めると、同時通訳の技術に学ぶところは多い。

同時通訳の困難さ

 アポロ11号の月面着陸がテレビ中継されたころ、つまり同時通訳というものの存在が世に知られ始めたころは、同時通訳は「名人芸」か「神業」のように思われていた。だが実際はそんなことはなくて、スキルとして説明可能な一定の原理原則に基づいた説明可能な作業である。 

参考: 『吹田市民大学講座 関西大学講座 講演録(第一部)』

 翻訳(和訳)を考える上では、「二重課題」と「時間的制約」については、まぁ、とりあえず無視していいだろう。だが、「統語的制約」はそうもいかない。

統語的制約

  1. 統語構造の違いをオンラインで乗り越えなくてはならない
  2. どこで分けるか(チャンキング)の適切な判断が必要
  3. チャンクごとに訳出するため訳が不自然になりやすい

例題

A strong earthquake hit a wide area of Japan from Hokkaido to the Chugoku Region at about 11:08 p.m. Thursday.

  1. (学校で習うように訳した場合)強い地震が、木曜の午後11時8分ごろ、北海道から中国地方にわたる日本の広い地域を襲いました。
  2. (同時通訳風に訳した場合)強い地震が日本の広い地域が観測されました。これは北海道から東北地方にわたるもので、木曜の午後11時8分頃のことです。

1番の訳と2番の訳には大きな開きがあるが、この差を埋めるのが同時通訳文法になる。

同時通訳文法

ルール1(処理ユニット)

同時通訳は原則として「命題」を処理単位とする。

ルール2(文の情報構造と命題化方略)

 自然文は「何が(=主題)、どうした(=題述)」という要素が揃っている場合に「命題」として切り分けることができる。与えられた自然分をそのような枠組みで(必要であれば強制的に)再構成することを命題化方略と呼ぶ。

ルール3(主題部の訳出)

主題部は題述部に入った時点で直ちに訳出することができる。

ルール4(他動詞の処理)

 述部の動詞が他動詞である場合、その動詞が統率する目的語名詞句の終結を待って初めて動詞の(そのローカルコンテクストでの)意味が確定する。したがって、訳出は当該の目的語名詞句が終わってから行うのを原則とする。

ルール5(前置詞句の処理)

 主命題に続く前置詞句は「文(命題)相当の前置詞句」として処理することで、適切な訳出処理が可能になる。この方略=命題化方略=は、分子句や不定語句等にも適用することができる。

ルール6(訳し捨て)

定型句・慣用句はその場で訳し捨てることができる。

ルール7(情報の省略)

 何らかの事情で原文情報の一部を省略する必要がある場合は、当該命題の必須項ではない付加詞(Adjunct)を当面の省略対象とすることができる。

ルール8(上位語による置き換え)

  ある特定の単語(概念)に対応する訳語が見つからない場合は、その上位語(上位概念)で置き換えることができる。

ルール9(文頭の副詞句)

 文頭の副詞句は、主節の内容に関わらずその場で訳し捨てることができる

ルール10(専門用語 )

 専門用語は、その分野で習慣的に定まっている用語あれば、それを訳語として当てる。日常的な用語が使われている場合には特に注意して調べること!

ルール11(機能的翻訳)

 命題と明大とをつなぐ機能的な役割をもつ語句については、かならずその辞書的な意味ではなく、当該の文脈における機能的な意味を訳出するほうが適切な場合がある。

ルール12(即時処理方略の制約)

 同時通訳は即時処理をデフォルトの方略とするが、この場合、最低限、次のユニットの冒頭部を聞いてから(当該ユニットの訳出プランが正しいことを確認してから)訳出にかかるのが好ましい。

ルール13(関係詞節の訳出)

  関係代名詞節や関係副詞節は、原則として独立した命題として扱い(ルール2)、先行の文節と切り離して処理をする(そのうえで、先行の命題との適切な合成化を経た上で訳出する)


ルール1~4,9,11などは『スーパー英文読解法』の処理原則にかなり近い。ルール3,13などの具体的な処理は、『英文翻訳術』に書いてある。

理屈はまぁこれくらいにして、もっと練習しなくては!過去のトライアル課題をもう1回やろうかな。