結晶の分類(対称性・ブラべー格子)

高圧合成ダイヤモンド。{111},{100},{110},{113}の4種類の面が認められる。(中央宝石研究所ウェブサイトより)
ほかの技術知識

以前投稿した結晶格子面の表し方(ミラー指数)についての記事に関連して、結晶の分類(結晶構造・ブラべー格子・平行移動など)について勉強したときのメモ。おもに『金属物理学序論―構造欠陥を主にした (標準金属工学講座 9) 』を参考にした。

結晶の定義

結晶の本来の定義は以下に引用するように幅広いが、本稿では簡単に「特徴のある多面体の外形をもつもの」として話を進める。

空間的に周期的な原子排列をもった固体物質で、空間格子構造をもつ。単結晶に限定してこの言葉を用いることもあり、その場合には外見的に明瞭な結晶形を示すことが多い。もっと広義には、外見上結晶の構造が明らかでない顕微鏡的な小結晶の集合体すなわち多結晶をも結晶という。固体は結晶と無定形状態とに分類されるが、拡散、タンパク質のような高分子物質でも、少なくとも部分的には結晶構造をもつものが多く、むしろ結晶は固体の正常な状態であって、固体物性の大部分は結晶構造にもとづいて理解される。結晶を構成する凝集力ないし化学結合の性質によって、結晶はイオン結晶、金属結晶、共有結合結晶、分子結晶などに分類される。原子の排列の型すなわち結晶構造は多種多様であるが、それぞれ結晶群の対称性に従う異方性を表わし、結晶系などによって分類される。実在の結晶はなんらかの意味で排列の乱れをもつ不完全結晶である。

岩波理化学辞典(第3版増補版)

結晶構造

結晶構造について考えるということは、基本単位である「単位構造」をどのように組合わせることによって題意の結晶が成り立っているかを考えることだろう(と思う)。

平行移動の操作

『金属物理学序論―構造欠陥を主にした (標準金属工学講座 9) 』 によれば、単位構造とは「構造上の単位を含む基本となる最小の空間」であり、結晶構造とは「単位構造をつねに一定の距離にだけ三次元的に平行移動することによって形成されるもの」とある。

したがって、結晶構造とは、単位構造を構成する基本ベクトル(a, b, c)に対して、三次元的平行移動操作を加えたものである。なお、基本移動ベクトル(a, b, c)は互いに直交している必要はないが、空間的な移動であるから、一平面上には存し得ない。

平行移動した単位構造を組合わせることにより結晶構造が構成される

なお、岩波理化学辞典(第3版増補版)で結晶構造を引くと「結晶を構成する原子(中性またはイオン)あるいは分子は三次元の周期性をもって排列し空間格子をなして」とあるが、「単位構造」については項目自体がない。ひょっとすると「単位構造」という用語はマイナーなのかもしれないが、とりあえず現時点で気にするようなことでもないので、これはこれとする。

空間格子と単位格子

空間格子

  • 単位構造内の任意の一点をとって、それに対して平行移動の操作を加えることにより得られる、空間的に規則正しい分布をした点群
  • 空間格子の各点を「格子点」という
  • 各格子点はつねに「同等な周囲」を有しており、どの空間格子点も周囲の状況が空間的にまったく同等である。
出典:『金属物理学序論―構造欠陥を主にした (標準金属工学講座 9) 』

単位格子(単位胞)

  • 空間格子を作るときの基本になる格子
  • 空間格子と同じ対称性を持つ最も簡単な格子
  • 基本移動によって全体の空間格子が形成されるような、基になる最小の格子

以上に述べた「格子」の概念を導入することにより、個々の原子の位置には着目せず、空間格子の観点で整理することができる。

空間格子(黒枠)で、まったく異なる結晶構造を表すことができる(参考: 『金属物理学序論―構造欠陥を主にした (標準金属工学講座 9) 』 )

ブラベー格子

実在する多種多様な結晶構造を、14種類の単位格子(ブラべー格子)に分類することができる。各格子の名称は、結晶系(三斜・単斜・直方・正方・六方・菱面対称・立方)と種類(単純・底心・体心・面心)とを組み合わせたものになっており、下記の表ではそれぞれ、①単純三斜格子、②単純単斜格子、③底心単斜格子、④単純直方格子、⑤底心直方格子、⑥体心直方格子、⑦面心直方格子、⑧単純正方格子、⑨体心正方格子、⑩六方格子、⑪菱面体格子、⑫単純立方格子、⑬体心立方格子、⑭面心立方格子である。

ブラべー格子(図はwikipediaより)
単位格子の隅にだけ格子点がある単純立方格子以外は、厳密にいえば完全な単位格子とはいえないが、形が正しく、立体的な対称性をもっているので、便宜上、単位格子に含めて考える

対称性に着目した分類

ブラべー格子は、空間格子に着目した分類だったが、ほかに結晶軸を基準とした対称性に着目した分類がある。上述のブラべー格子の表で、一番左の列の〇〇系というのは、 結晶軸のとり方を基準として結晶を総括するために設けられた分類である。

結晶系の分類は、対称性を考慮して選んだ3本の座標軸、いわゆる主軸の長さに比である軸比(a:b:c)と、互いの傾き角および軸角の関係で決まる

結晶軸

結晶に関し、各結晶面や物理的性質の対称性などの記述を組織的に行い得るように選ぶ座標軸。結晶の対称性にもとづいて一定の方式で選ばれ、回転軸をもつ結晶については、ふつう最も高い対称の字数を持つ軸を結晶軸の1つにとる。回転軸がない結晶でも、最もしばしば現れる結晶面間の、同一平面上にはない3稜を選ぶ。(後略)

岩波理化学辞典(第3版増補版)

面角一定の法則

同じ物質である限り、2つの標本の対応した結晶面の角度は一定である、という法則を「面角一定の法則」という。

面角一定の法則が成り立つ面角一定の状況を考えるためには、2つずつの面のなす角度で表すよりも、面に垂直な直線のなす角で表したほうが都合がよい以下の水晶の例のように、六角形をなす面の間の角度が互いに120° になっている場合、六角形の中の1点から各面に垂線を下すと、互いに60° の角度をなす3本の直線が得られる。

つまり、外形にとらわれず、かつ6個の面がまったく等価であって、縦の方向(紙面に垂直な方向)が対称の軸になる。

(出典: 『金属物理学序論―構造欠陥を主にした (標準金属工学講座 9) 』 )