電気+自動車④ モータ関係メモ

ほかの技術知識

要点を書き出してアタマの整理


電気自動車のモータに要求されるもの

 特定の負荷や回転数で動作することが多い家電用や工場用のモータとは異なり、交通環境や走行モードに応じて、自動車のモータに要求される回転速度・トルク特性は大きく変わる。さらにEV用モータの場合は、①小型軽量あること、②高トルクであること(高い加速性が必要)、③高パワー密度であること(航続距離を伸ばすためには、軽量化による転がり損失の低減と小型化による空気抵抗の削減が必須)、④高効率であること(定格出力まわりの狭い領域だけでなく、すべての速度トルク全域で高効率であることが必要)が求められる。

これらを踏まえて、モータの出力トルクと回転速度との関係に着目して「運転」を4つに分類(四象限運転)すると、以下のようになる。

  1. 正転駆動:前進加速(回転方向:正、トルクの向き:正)
  2. 正転制動:前進減速(回転方向:正、トルクの向き:逆)
  3. 逆転駆動:後進加速(回転方向:逆、トルクの向き:正)
  4. 逆転制動:後進減速(回転方向:逆、トルクの向き:逆)

回転方向が「正」であるとき、モータは電気エネルギーを機械エネルギーに変換して加速する。反対に、回転方向が「負」であるとき、モータは発電機となって機械エネルギーを電気エネルギーに変換する。

 一般に交流モータでは、1極あたりの磁束は極数に反比例するので、固定子と回転子のヨークの厚さを薄くできるため、極数を増やすとモータの重量減らすことができる。いっぽうで、極数が増えるとモータを駆動する周波数が高くなり、インバータの電流制御が難しくなるだけでなく、モータの鉄損も増えるのでトレードオフを考えなくてならない。また、高速なトルクデマンドに瞬時に応答するために、マルチループ制御システム(マイナーループの外側に上位の制御ループを設けたもの)を採用し、運転指令や各種センサから得られた電圧・電流・速度などの情報に基づいてPWMインバータのゲート信号を決定する。

PWM
PWMはPulse Width Modulationの略であり、日本語に訳すとパルス幅変調である。したがって、PWM制御とは「パルス幅を変調させることで所望の出力電圧(電流)を達成する」技術を意味する。よく似た略称にPCM(Power Control Module)があるが、こちらは電気自動車の高電圧系の電力変換を行うユニットである。

モータの原理

 フレミングの左手の法則(iBl則)、つまり電気→力の法則にしたがい、エアギャップで発生する電磁力は磁束密度と電流の積に比例する。このうち、磁束密度はモータに使用される鉄心の飽和磁束密度がボトルネックとなり、電流は、導体内で派生する損失による温度上昇がボトルネックとなる。そのため、大雑把に考えると、モータの発生できる電磁力の最大値はエアギャップ面の面積に比例する。また、鉄心材料や磁石材料でエアギャップ面の磁束密度を向上するには限界があるため、トルク密度を上げるには最大電流の向上が有効となり、巻線抵抗による放熱技術が重要になる。パワー密度の向上について考えると、P = τ・ωより、最大トルクだけではなく最大回転数を上昇することも大切だが、各部品の機械的強度やモータ周波数の上昇による変換器の応答性など課題も多い。

交流モータ

 電気自動車用のモータとして、保守不要なブラシレス構造の交流モータが多数使用されている。励磁の方法や回転磁界によって、いくつかの種類に分類される。回転子巻線は、機械的強度や発熱の点から、「あり」より「なし」のほうが有利である。永久磁石のほうが効率の点で有利であるが、界磁弱め制御をするのであれば励磁電流(モータ外部から電流を供給する)ほうがよい。

  • 誘導モータ(回転子巻線あり・励磁電流・回転磁界)
  • 永久磁石同期モータ(回転子巻線なし・永久磁石・回転磁界)
  • シンクロナスリラクタンスモータ(回転子巻線なし・励磁電流・回転磁界)
  • スイッチトリラクタンスモータ(回転子巻線なし・励磁電流・移動磁界)

構成

交流モータ駆動システムの構成において、インバータの電源としてバッテリを直接接続するのが一般的だが、必要に応じてバッテリとインバータの間にDC/DCコンバータ(昇降圧チョッパ)を入れて入力電圧を可変とし、モータの制御範囲を拡大することができる。

交流モータ駆動システムの基本特性

  1. モータ内部の磁束の大きさφは自由に調整できる。
  2. モータのトルク電流Iは自由に制御できる
  3. トルク電流Iの最大値はPWMインバータの定格で制限される
  4. モータ電圧Vの最大値はPWMインバータの定格で制限される

また、インバータの入力電圧検出は、DC/DCコンバータによる入力電圧制御以外にも、バッテリの異常検出や高負荷時のバッテリ電圧低下の影響を保証するために用いられる。入力の直流電力を交流電力へ変換して交流モータを駆動するPWMインバータでは、制御回路に実装されたベクトル制御などのモータ制御法に基づき、任意の振幅と位相の出力電圧(最大値は入力直流電圧によって決まる)を交流モータに印加する。

界磁弱め制御

上記の基本特性4つに関連する式として、以下の3つがある。

  1.  τφI
  2.  P = τω
  3.  V φω

 これらの式からわかるように、モータのトルクτは磁束の大きさφとトルク電流Iの積に比例するので、高トルクを得るためには磁束φは磁気飽和の範囲内で最大に保つのが有利である。いっぽう、トルク電流Iとモータ電圧Vには、PWMインバータの定格による制限がかかる。そのため、モータの回転数ωによらず出力Pを一定に保つために、規定速度以上の中・高速領域においては、磁束φωと反比例するように調整する必要がる(界磁弱め制御)。

また、モータのトルクτは磁束の大きさφとトルク電流Iの積に比例するので、高トルクを得るためには磁束φは磁気飽和の範囲内で最大に保つのが有利である。磁束φを一定に保ったとき、トルク電流Iにはインバータの定格電流による制限がかかるので、モータの出力パワーPは回転速度ωに比例して増加する。いっぽう、モータの巻線に発生する誘起起電力の大きさは、φωの積に比例する。ωが高くなり過ぎると、PWMインバータは最大出力電圧より大きな電圧を出力できないため、十分なモータ電流を流すことができず、それ以上の回転数ではモータを駆動することができない。